■「沈黙〜静サイレント」
説明責任にコミュニケーションスキル、雄弁が処世術の要とすらされるこんにち、しかしながら「黙る(だまる)」ということが意思の非表示や不在とはならない。沈黙と思考停止は別である。
このこととまったく同様に、静かサイレントとは必ずしも無音状態ばかりを表すものではない。
サイレントは一般に、「静かな」と訳されるが、「静」とは“青”がひしめき充満し、高密度にぶつかりせめぎ合い“争う”様子を示すのではないだろうか。
また、サイレントsilent は一般に、無音状態と理解されるが、今回私が制作する青のトンネルは、無音状態、即ち音が“聞こえない”状態とは対極をなす。これらの場所は“サイレントという音”が充満した高密度な空間である。
■「涅槃寂静の景観」
涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)とは、「煩悩の炎の吹き消された悟りの世界(涅槃)は、静やかな安らぎの境地(寂静)であるということを指す」とされる。
過去これまで示したように、境界とは不均質が接する境であり、トンネルは境界を象徴する。
したがってこれら青のトンネルは、サイレントがひしめき充満した境界であり、寂静・サイレントの風景はこのような姿なのではないだろうか。
であるならば、涅槃寂静は、この高密度な寂静の風景を抜けたむこうにある世界であろう。
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